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不当解雇の弁護士コラム

しつこく退職を勧めること(退職勧奨)は違法じゃないの?

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はじめに

突然、上司から呼び出され「会社を辞めてくれないか?」「辞める気はないのか?」「うちと合わないから他の仕事を探した方がいいんじゃないか?」などと言われ、退職を迫られるということがあります。

退職に応じなければ、営業成績が悪い!などと叱責したり、仕事を無くされたり、無視されたりと嫌がらせをされ、退職に応じざるを得ない状況に追い込まれることもあります。

しかし、「年齢的にも転職はキツイ。」「家族のためにも仕事を続けないといけない。」「他社より待遇が良いため辞めたくない。」など様々な事情によって、退職したくないと考えられ、退職に応じないという決断をされる方が多いと思います。

そうすると、会社はあなたを退職させようと、何度も面談をしたり、説得を繰り返したりします。
このように、あなたが「辞めます。」と言うまで、退職を迫り続けることは違法とならないのでしょうか。

退職勧奨(退職勧告)とは?

使用者が労働者に対し、任意退職に応じるよう促し、説得等を行うことを、退職勧奨といいます。

読み方は、「たいしょくかんしょう」です。

法律的には、合意退職の申込であり、自発的な退職意思を形成させるための説得行為とされています。お互い納得の上で労働契約を結んだものを、お互い納得の上で解消するために、会社から退職を働きかけるというものです。

したがって、あなたが納得して「退職します。」と言わない以上、あなたが退職を強制されることはありません。

他方、あなたが納得しているか否かにかかわらず、一方的に退職をさせるのが「解雇」です。

退職勧奨をしつこくすることは許されるのか?

以上、ご説明しましたとおり、あなたが「辞めます。」と言わない以上、退職をする必要はありません。

しかし、会社はあなたを退職させるために、しつこく退職を求めてきますので、あなたは精神的に追い詰められることになります。なぜなら、「解雇」は厳しい条件をクリアした場合にのみ認められるものですので、後日「不当解雇だ!!」と言われないようにするため、あなたに「辞めます。」と言わそうとするのです。

では、どのような退職勧奨であっても、適法となり許されるのでしょうか?

答えは、度を越えた退職勧奨は違法になる。

です。

具体的には、

・労働者の自由な退職意思の形成を妨げるものであって、社会通念上相当と認められる程度を超えたもの
・退職勧奨の態様が,退職に関する労働者の自由な意思形成を促す行為として許容される限度を逸脱し,労働者の退職についての自由な意思決定を困難にするものであったと認められるような場合には、退職に関する自己決定権を侵害するもの

は違法と判断され、不法行為になります。
退職勧奨に応じるか否かは自由であるからこそ、その自由な意思を抑圧する程強度の退職勧奨は許されないという論法です

このような違法な退職勧奨のことを退職強要と呼ぶこともあります。

裁判例の傾向を見ると、①対象勧奨に応じない意思を明確に示したか②面談の回数、時間③退職勧奨の期間④会社側の言動の内容(脅迫的、侮辱的等)などを総合的に考慮してt退職勧奨の違法性を判断しているようです。

退職勧奨(退職強要)に関する裁判例

実際、退職勧奨の違法性が争われた裁判例は多くありますので、いくつかご紹介します。
①兵庫県商工会連合会事件

【事案】
商工会連合会の職員が、退職勧奨を受け、これを拒否する態度を明確に示したにもかかわらず、必要性のない転籍、出向を命じられた上で給料の減額など様々な経済的不利益を受けました。また、上司から「自分で行き先を探してこい。」「管理者として不適格である。」「ラーメン屋でもしたらどうや。」「商工会の権威を失墜させている。」などの言動がありました。
【判断】
退職勧奨を違法と判断しました。
【理由】
「退職勧奨は、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる程度を超えて、労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、または、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いることによって、その自由な退職意思の形成を妨げることは許されず、そのようなことがされた場合には、不法行為を構成する。」として、上記事実関係のもとでは、退職勧奨は違法とした。

②某デザイン会社の事件

【事案】
デザイン会社の社員が、その社員の体調不良を理由として合計5回の退職勧奨の面談を受け、第2回目の面談で退職に応じない発言をしたところ、退職に同意しなければ解雇するとの発言を受けました。第2回目の面談は1時間、第三回目の面談は約2時間という長時間行われ、また退職勧奨に応じない意思を示した後も繰り返し面談が行われました。
【判断】
退職勧奨を違法と判断しました。
【理由】
「退職勧奨を受けるか否かは、労働者の自由な意思に委ねられるものであり、退職勧奨は、その自由な意思形成を阻害するものであってはならない。退職勧奨の態様が、退職に関する労働者の自由な意思形成を促す行為として許容される限度を逸脱し、労働者の退職についての自由な意思決定を困難にするものであったと認められるような場合には、当該退職勧奨は労働者の退職に関する自己決定権を侵害するものとして違法となる。」として、上記事実関係のもとでは、退職勧奨は違法とした。

③アートディレクター事件

【事案】
アートディレクターであった労働者が、肺炎のため1年3カ月休職し、復帰した後、「売上が低い。」「病気なので、仕事を頼みずらい。」として退職勧奨を受けました。
そして、4回の面談が行われそれぞれ1時間~2時間程度の、退職勧奨を受けました。また、労働者の業務量を調整し残業がほとんどない状態になるとみなし残業代の支給がなくなり、給料が減ると告知されました。しかし、大声で怒鳴りつけたり、恫喝したりされたことはなく、人格を否定する発言や帰宅が困難になる時間帯までの面談はありませんでした。また、休業期間が長く解雇理由に該当するという事情がありました。
【判断】
退職勧奨は違法ではないと判断しました。
【理由】
「労働者が退職勧奨に応じない意向を示した場合であっても、退職勧奨を行う理由や退職勧奨に応じなかった場合に予想される今後生じうる事態について説明し、労働者に退職勧奨に応じるよう翻意を求めて説得をすること自体は許される。」として、面談の時間も退職勧奨に応じるよう説得するのであれば、その程度の時間を要したとしても無理からぬことであり、説得の態様も恫喝などするようなものではない。退職勧奨に応じなければ業務量が減り給料が減額されるのも不当なものではなく、労働者として納得できる理由の説明がないとして不快感や不満足感を抱いたことも退職勧奨という行為の性質に起因するものであるといわざるを得ない。以上のことから、退職勧奨は違法とまではいえないとした。

退職勧奨をされた場合の対処法について

①退職勧奨を止めさせること
先ほど紹介した裁判例を見ると、労働者が明確に退職勧奨に応じない意思を示していることから、面談中の発言が違法性を判断する要素となっています。

したがって、面談中の会話を録音するなどして、明確に退職勧奨に応じない意思を示したこと面談中の上司の発言証拠化することが重要です。

そして、退職勧奨が違法である証拠を持っていることを武器に違法な退職勧奨を止めさせることになります。
場合によっては、弁護士から内容証明郵便を送付することを考えるべきです。

②退職勧奨に耐え切れず退職届を出してしまった場合の撤回
厳しい退職勧奨に応じてしまい退職届を出してしまった場合、諦めざるを得ないのでしょうか。会社に対して異議を述べたとしても、「自分で退職届を出したのだから!」と言って、突っぱねられることになるでしょう。

しかし、厳しい物言いや解雇をちらつかされてやむを得ず、退職届を提出してしまった場合は、労働者の自由な意思による自己決定が侵害されていたとして、退職の撤回を求めることができます。

詳しくは、「解雇よりいいだろう!」と言われ退職届を出してしまった場合、退職届を撤回できるのか?をご覧下さい。

③慰謝料の請求
退職勧奨を受けた場合、労働者として自分が退職勧奨の対象となったことに不快感を覚えることになるでしょう。しかし、それ自体は退職勧奨の性質上やむを得ないものとして、慰謝料を請求できないと裁判例で判断されています。

しかし、退職勧奨が違法と判断されると、それは不法行為といえます(民法709条)。
したがって、退職勧奨が違法と判断されれば慰謝料を請求することができます。

そして、その相場は、いくつかの裁判例を調査すると概ね50万円前後となっています。

退職勧奨を受け入れ退職した場合

退職勧奨に応じ、退職することを決意した場合、すぐに次の仕事が見つかる方ばかりではありません。そうすると、失業保険を受給することになります。

みなさん、「自己都合退職より会社都合退職の場合の方が失業保険は得!」ということは多く知っておられます。

しかし、退職勧奨を受けた場合でも、会社都合退職と同じく失業保険が有利に給付されます。
つまり

①3カ月待たずに受給できること
②6か月雇用保険に加入していれば、受給できること
③給付日数が自己都合退職よりも多い

という利点があります。

このように有利な給付を受けることができる方を「特定受給資格者」と呼びます。

ただし、退職勧奨を受けた場合に特定受給資格者となるためには、離職票の離職理由欄の「退職勧奨」に☑が入っている必要がありますので、注意が必要です。

最後に

退職勧奨を受けた後、それを拒否すれば、解雇や不当な配置転換、減給など不利益な処分を受ける可能性が高いです。
そうならないように、退職勧奨を受けた場合には、事前に弁護士までご相談下さい。
早期にご相談いただくことにより、退職勧奨を止めさせる方法を一緒に考えたり、その後の不利益処分に対して迅速に抗議できるようになります。

大阪バディ法律事務所は、労働問題について、豊富な知識と経験があります。
お気軽に当事務所の弁護士までご相談(無料)下さい。お電話お待ちしています。

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