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不当解雇の弁護士コラム

雇い止め(更新拒否)されたとき有期雇用の契約社員がとるべき対処法

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はじめに

近年は労働力不足と言われるほど、売り手市場になっていますが、非正規社員がまだまだ多いのが実情です。
そして、「正社員としての登用がある。」と言われていたり、実質的に何度も契約を更新していたにもかかわらず、いきなり雇い止めにあったということもよく耳にします。
しかも、契約書には「契約を更新することがある。」と記載があるだけで、「必ず更新する。」というような記載になっていないことから、契約の更新拒否をされた場合、素直に諦めざるを得ないと思ってらっしゃる方も多くいます。

しかし、有期雇用の契約社員が、更新拒否、雇い止めをされた場合、法的に正社員への登用を会社に求めることができたり、更新拒否は違法であると主張し契約社員としての雇用を続けさせる権利が認められる場合があります。
雇い止め・更新拒否をされた方、またそのような可能性がある方は、泣き寝入りにならないようにするため、しっかりと知識を付けましょう。

有期雇用の契約社員とはどのような社員か?

一般的な言い方としては、正社員と非正規社員とに区別されて呼ばれることがありますが、非正規社員の中には、契約社員だけでなく、派遣社員、出向社員、アルバイト等も含まれます。
そして、正社員と非正規社員の中のうち契約社員を法的な言い方に直すと、

「期間の定めのない雇用契約」(正社員)
「期間の定めのある雇用契約」(契約社員)に区別されます。

契約社員の場合は、一般的に、雇用契約書や労働条件通知書において、
「この有期雇用契約は1年間に限り有効とする。但し、更新することがある。」
というような記載があります。

正社員の場合は、「期間の定めがない」ことから、契約の更新や雇い止めということはありません。会社側から一方的に退職させたい場合は、「解雇」ということになります。

他方、契約社員の場合は、「期間の定めがあり」ますので、基本的には契約期間が終了すれば、雇用契約は終了となります。

3 契約期間に関する上限の決まり

先ほどご説明したとおり、契約社員の場合は、雇用期間があり、雇用期間が終了すると、雇用関係が終了します。

そして、労働基準法では、その契約期間の上限を原則として3年としています。
例外としては、高度プロフェッショナル業務、60歳以上の労働者との契約については、5年とされています。

この上限を定める法律の規定に違反して更に長い期間の有期雇用契約を定めたとしても、その契約期間は無効になり、上限の3年とされます。そして、既にその期間を経過していたときは、民法629条1項により、黙示の更新がされたとして、同一上限の3年で契約更新がされたものと扱われると考えられています。

他方、契約期間の下限について規制する法律の規定はありませんが、法は必要以上に短い期間を定めることがないよう配慮するよう会社に求めています。

労働基準法第14条
「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約
二 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約」
民法第629条1項
「雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。」
労働契約法第17条2項
「使用者は、有期労働契約について、有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」

雇い止め、更新拒否とはどういう場合か

雇い止め、契約の更新拒否は、有期雇用契約の場合だけに生じる問題であり、契約期間満了とともに、雇用契約を終了させるというものです。正社員であれば、「雇用期間の定めのない契約」ですので、契約期間がなく、雇い止めの問題は生じません。

他方、有期雇用の場合であって、その契約期間中に会社が雇用契約を一方的に終了させることは、解雇になります。
そして、有期雇用の場合の解雇は、「やむを得ない事由がある場合」のみ認められ、正社員の場合よりも解雇の有効性が厳しく判断されることになります。つまり、正社員を解雇するよりも、有期雇用社員を解雇する方が難しいのです。

労働契約法第17条(契約期間中の解雇等)
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」

雇い止め、更新拒否はどのようにしてされるのか?

実際、雇い止め、更新拒否はどのようにして言い渡されるのでしょうか。

多くは、契約期間満了の1か月~3カ月前に告知されたり、評価面談が決まった時期にあればそのタイミングで告知されます。また、雇用契約書、雇用条件通知書に、「契約期間満了の2カ月前に当事者双方から契約終了の意思が示されない場合は自動更新する。」というような記載があれば、自動更新がされないように、この場合であれば、2か月前に告知されることになります。
とりわけ、3回以上契約を更新した場合や1年以上雇い入れている場合には、30日前に雇い止めを予告しなければならないという厚生労働省が定めた基準もあります。

そして、雇い止め、更新拒否をする場合、契約期間満了で契約は終了すると記載のある通知書を渡されることが通常です。雇い止め、更新拒否は口頭ですることもでき、必ずしも書面で行う必要はありませんが、デリケートな問題であり、後日紛争が生じやすいため、通知書など書類に残す形で行われます。また、使用者と労働者双方からも契約を終わらせる意思を示さなければ自動更新するという記載があれば、明確に契約を終了する意思を示し証拠を残しておかなければ、労働者から「雇い止めとは聞いていない。」「正式なものとは思っていなかった。」などと主張され、契約関係の終了の有無に疑義が生じることも理由の一つです。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)第2条(雇止めの予告)
「使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない」

雇い止め(更新拒否)を告知されたときの対処法?

もし、あなたが雇い止め、契約の更新拒否をされてしまった場合、会社に対してどのような主張ができるでしょうか?

次の
①無期転換ルールの適用を主張し、正社員としての雇用を求めること
②雇い止め法理の適用を主張し、雇い止めが無効であることを前提に、契約更新を求めること

の2つの主張ができないか、まず考えることになります。
詳しくご説明します。

無期転換ルールとは何か?

無期転換ルールというのは、1回以上契約を更新し、通算契約期間が5年以上になった場合、同じ会社で勤務していた有期雇用の契約社員は、会社に対して、正社員として雇い入れることを法的に請求できるというルールです。これは、労働契約法において、労働者に権利として認められているものです。

このルールの適用に関して、重要なポイントが4つありますので、ご説明します。

①契約の更新が1回以上あったこと
はじめての契約更新時期に、雇い止めにあった方は、このルールが適用されません。1回以上契約が更新されたことが必要です。他方、更新回数が多くても問題はありません。

②同じ雇い主との雇用契約であること
例えば、ある会社に契約社員として入社した後、1回目の更新で同じグループ会社の別会社の契約社員になることが決まった場合は、このルールは適用されません。あくまでも、同じ雇い主(会社)との有期雇用契約が1回以上更新されていることが必要です。

他方で、同じ会社であれば、職務内容、勤務地が変更になっても、このルールは適用されることになります。

③通算の契約期間が5年以上であること
1回以上更新された有期雇用契約の通算の期間が5年以上なければ、このルールは適用されません。例えば、1年毎に契約更新がある場合は、5回目の更新がなされた時点でこの正社員になるための無期転換の申込権が発生します。

しかしながら、注意が必要な点が1つあります。
5年という計算期間が開始されるのは、平成25年4月1日以降に契約した有期雇用契約からになります
例えば、平成25年3月31日までに5年間契約が更新され続けていたとしても、平成29年3月31日に雇い止めがあった場合は、4年間のみが通算契約期間とされてしまいますので、このルールは使えません。
また、平成25年3月31日から1年の有期雇用契約を締結した場合、通算契約期間の計算の始期になるのは、平成26年3月31日からの契約からです。

必要なのは、①平成25年4月1日以降であること、②この期間以降に契約を始めた又は更新したことです。

④契約期間の満了前に正社員になると主張したこと
雇い止めが告知された後、実際に契約期間が終わるまで時間があることが通常です。雇い止めの告知がされた後に、正社員になると主張した場合はこのルールの適用がありますし、雇い止めの告知がなされる前であっても自主的に正社員となると主張した場合にもこのルールは適用されます。

しかし、無期転換ルールを契約満了後に初めて知った場合や悩んでおりなかなか言い出せず契約期間が過ぎた場合には、このルールは適用されません。必ず、有期雇用契約が存続している期間中に、正社員になると市主張することが必要なのです。

この無期転換ルールは法的で定められたものであり、すべての会社で適用のあるルールです。大企業であっても、中小企業であっても変わりません。
しかし、このルールを知らない使用者・労働者も多くいますので、厚生労働省において、「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」を運営し、周知を図っています。このサイトの「契約社員・アルバイト向けQ&A」がよくある質問をまとめていますので、ご覧ください。また、同サイトではハンドブックの配布もありますので、コチラもご覧ください。

労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件について(別段の定めがある部分を除く。)とする。」

雇い止め法理とは何か?

雇い止めの法理は、労働者が契約更新がなされると期待することが合理的な場合や何度も更新されていて雇い止めが正社員に対する解雇と同視できる場合に、雇い止めや更新拒否がなされたときに、その雇い止め等が不当だと主張し、契約の更新を法的に請求できる権利のことをいいます。これは、労働契約法において、労働者に権利として認められているものです。

雇い止め法理が適用される条件は、次の3条件です。
①雇い止めが解雇と同視できることor更新されると期待することが合理的なこと
②労働者が契約の更新を求めたこと
③更新の求めを拒否することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと

です。

①の条件については、
雇用が臨時的であるか常用的であるか、更新の回数が多いかどうか、雇用の通算期間が長いかどうか、契約更新の際も契約書を再作成したり、更新が告げられることはなく当然更新されていたのかどうか、雇用継続の期待をもたせるような上司の言動があったかどうか有無を総合的に考慮して判断されることになります。例えば、3年契約の更新が5回なされ通算15年間働いており、更新のたびに契約書を再作成することもなく、更新後の予定まで上司に指示されていた場合などは、雇い止めが解雇と同視でき、更新を期待することが合理的であると認められることになるでしょう。

③の条件については、合理的な理由があるか否かを判断するために、雇い止めの理由をはっきりとさせる必要があります。ですので、まずは使用者に対して、雇い止めの理由を記載した証明書の交付を要求すべきです。請求の根拠は厚生労働省が定めた基準です。また、使用者は雇用契約を締結する際には、更新する場合の基準を明示することが求められています。
以上により、明示された更新する場合の基準からして、証明書に記載のある雇い止めの理由が合理的なものかを判断することになります。そして、合理的なものであるかどうかは使用者側に証明する責任があるとされています。

厚生労働省では、リーフレットを作成し、雇い止めの基準について詳しく解説していますので、リーフレットもご覧ください。

労働基準法施行規則5条
「使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」
労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)
「有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって
、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させる
ことが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。」
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)第1条(契約締結時の明示事項等)
「使用者は、期間の定めのある労働契約の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3 使用者は、有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。」
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)第3条(雇止めの理由の明示)
「前条の場合において(雇い止めの予告)、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

会社に対して要求できることとは?

無期転換ルールや雇い止め法理があるものの、会社は色々な言い訳をして、ルールや法理の適用がないと主張してくることがあります。そのような場合は、

①復職請求
無期転換ルールの場合であれば正社員としての地位を前提とした復職請求雇い止め法理の場合であれば契約更新を前提とした、復職請求

②バックペイ(給料の請求)
本来であれば引き続き仕事をし給料を貰っていたはずだったにもかかわらず、会社の誤った判断により働けなくなったのだから、会社都合の出勤停止として、雇い止めされて以降の給料を請求することが認めれます。

③解決金
本来であれば不当な雇い止めとして復職可能ですが、揉めた会社で働きたくない、復職したくない場合に、退職を前提として会社から解決金が支払われることが多くあります。復職請求、給料の請求をしない代わりに、示談金を貰うという言い方が分かりやすいかもしれません。

不当な雇い止めにあった場合会社に要求できることは、不当解雇の場合大きく変わりはありませんので、

詳しくは

「解雇を争う際に会社に要求できること」

「不当解雇で会社を訴えた場合の解決金の相場」

をご覧ください。

最後に

有期雇用の契約社員は、正社員と比べるとその地位が不安定であるからこそ、不当にその地位が奪われないようにするため、法律が無期転換ルールや雇い止めの法理を定めたり、厚生労働省が基準を定めたりしています。

しかし、このような知識がなく、不当な雇い止めを受け入れ、泣き寝入りになった方が多くいることでしょう。不当な雇い止めが横行しないように、労働者が泣き寝入りしないで済むように、大阪バディ法律事務所の弁護士があなたの味方になって戦います。

大阪バディ法律事務所は、労働問題に豊富な実績があります。
雇い止めの予告がされてしまったという事態なれば、直ぐに当事務所の弁護士にお気軽に無料相談をしてください。お電話お待ちしています。

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