はじめに
いきなり会社の社長・上司に呼び出され解雇を言渡されたことから、頭が真っ白になったことと思います。そのため、解雇理由について、具体的に何を言われたか覚えていないこともあるでしょう。
また、まじめに働いてきたのに納得できない理由で突然解雇されたことに強い不満を持っている方もいらっしゃると思います。
解雇は、解雇に客観的合理的な理由がある場合にのみ有効と判断されます。
したがって、解雇理由が不当であると反論をするためにも、会社に対し、解雇理由を明らかにさせる必要があります。
そこで、解雇理由を明らかにさせる方法、意味についてご説明します。
解雇はどうやって伝えられるのか?
解雇を言い渡す方法は、口頭でも書面でもよいとされ、方法を限定する法律上定めはありません。
ただし、通常は解雇予告通知書や解雇通知書など書面が作成され、それが読み上げられることが多いです。会社としても、会社の処分として明確化させておく必要があるからです。
では、解雇理由がよくわからない場合や納得できない場合はどのようにすればいいのでしょうか。
解雇理由証明書の交付を求める
解雇理由に納得できない場合や聞きもらした場合は、会社に対し「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。
解雇理由証明書とは、解雇の理由を記載した証明書のことをいい、労働基準法で会社に交付が義務付けられている書類になります。
「1項 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について 証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2項 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」
ただし、「労働者が請求した場合」にのみ会社は解雇理由証明書を交付すればよく、あなたが請求しない限り、会社は解雇理由証明書を交付する義務は発生しません。
また、あなたが口頭で請求したとしても、「請求した」という証拠が残りませんので、会社は意図的に解雇理由証明書の発行を怠ることも考えらえます。
そこで、解雇をされた場合には、内証証明郵便や開封通知を付けた電子メールなど証拠が残る形で、解雇理由証明書の請求をするべきでしょう。
解雇理由証明書のひな型を厚生労働省が(通達で)示していますので、そちらをご紹介します(参照:
解雇理由はどれぐらい詳しく記載することを要求できるのか?
解雇理由証明書を受け取り、記載を見た場合でも、イマイチよくわからないことがあります。
例えば、「上司の命令に違反した」「会社に損害を与えた」とのみ記載されている場合で、心当たりもないときです。
このような場合、具体的に解雇理由を記載するよう求めることはできるのでしょうか。
解雇理由の方法は、厚生労働省労働基準局の通達において
①解雇理由を具体的に記載すること
②就業規則の解雇事由に該当する場合はその条項の内容及び事実関係
を記載すること求めています。
したがって、会社には具体的に解雇理由を示すことが求められますので、曖昧な記載の場合は、再度解雇理由を具体的に示すよう請求できます。
少なくとも、いつ、どこで、だれが、どのように、どうしたという5W1Hを求め、あなたが反論できる程度に解雇理由を具体的に記載することを要求できるでしょう。
「解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないこと」
解雇理由証明書を貰えない時の対処法
解雇理由証明書の交付は、労働基準法上の義務であることはご説明したとおりです。
では、会社が解雇理由証明書の交付に応じない場合は、どのように対処すべきでしょうか。
①弁護士から内容証明郵便を送付し警告する
労働基準法上義務があるにもかかわらず、解雇理由証明書を交付しなければ、罰金として30万円以下の制裁が予定されています(労働基準法第120条)。
また、合理的な理由がないにもかかわらず、請求にもかかわらず解雇理由証明書が交付されないのは明確な解雇理由が存在しないからである可能性が高いです。
そこで、弁護士から内容証明郵便で罰則があることの警告、将来の裁判に備えて会社の不誠実な対応の証拠化をします。
弁護士から通知が届いた以上、会社も裁判に対して具体的な危機感を募らせ、会社が不利にならないよう解雇理由証明書を交付することが多いです。
②労働基準監督署に対する通告
すでにご説明しましたとおり、解雇理由証明書の交付は法律上の義務です。
したがって、解雇理由証明書を交付しなければ、会社は法律違反をしていることになります。
会社の労働法違反に対して指導・監督するのが労働基準監督署(通称「労基」)ですので、労基に通告することにより、労基から会社に対して解雇理由証明書の交付を促してもらうことができます。
解雇理由を明らかにさせる意味とは
そもそも、なぜ解雇理由を明らかにさせる必要があるのかという点についてご説明します。
①会社に解雇が有効であることの証明責任があること
そもそも、解雇が有効となるためには、会社側において、合理的な理由があることを証明しなければなりません。つまり、会社側が証明責任を負っているのです。
したがって、会社が合理的な理由があることを示せなければ、それ自体で解雇が不当で無効となるのです。
このような意味で、会社が解雇に合理的な理由があることを示させることに意味があるのです。
②解雇理由に対して効果的な反論をするため
会社側は、仮に合理的な解雇理由がない場合でも、これまでのあなたの勤務態度を見て、揚げ足をとって、解雇をすべき理由を探してくることが考えられます。
しかし、しょせんは無理やり探してきた理由であり、客観的に合理的な理由とはなりません。
したがって、このような理由を明示されれば、効果的な反論をし、解雇に合理的理由がないことを強く主張できます。
③会社が一度明示した解雇理由について、後日追加して主張できなくなること
解雇の種類によって取り扱いがわかれますが、懲戒解雇であれば、懲戒理由を懲戒解雇をする際に告げなければならないので、解雇理由を追加することができません。
他方、普通解雇であれば、当時主張していなかった理由でも、解雇理由を追加して主張することが理論上は認められています。
しかし、よほどの事情がない限り、後から追加されたに過ぎない理由は、そもそも会社側が問題視していなかった理由と受け取られます。
したがって、会社が一度解雇理由を明示すると、後日追加することは現実的に難しくなります。
最後に
以上のとおり、解雇理由を会社に明らかにさせることは、解雇の不当性を争う際に重要となってきます。
ただし、会社と一個人のあなたでは交渉力に差があり、また会社と闘うことは精神的に疲労が出ます。また、思ったとおりに物事が進んでいかないこともあるでしょう。
大阪バディ法律事務所は、解雇問題に強く、積極的に取り組んでいます。
解雇でお悩みの方は当事務所の弁護士までお気軽にご相談(無料)下さい。